古河電気工業株式会社様:DX認定取得支援サービス
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創業139年の古河電工、DX先端企業への舞台裏に迫る DXを全社で進める際に必要なこととは?
お客様の課題
デジタルガバナンスコードに沿ったDX認定取得を利用し確認しようとしたものの、客観的な判断が難しかった。
解決ポイント
DX推進の次の一歩につながる改善ポイントを明確化した。
変化の激しい時代を勝ち抜くため、多くの企業がDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させている。情報処理推進機構(IPA)が発表した「DX白書2023」の最新調査によれば、何かしらの形でDXに取り組んでいる日本企業の割合は69.3%と約7割にまで増加した。
だが、全社戦略に基づいて取り組んでいる割合にフォーカスすると54.2%にとどまる。DXを横断的に進めることが理想だと良く言われているが、実態としては難しいと感じている企業も多いのではないか。
DXとは単なる業務効率化ではない。デジタル技術やデータを活用したビジネスモデルの変革がゴールだ。そのため、「あまりにテーマが大きく、何から始めればよいのかわからない」との声もよく聞く。
こうしたニーズに応えるべく、経済産業省は「デジタルガバナンス・コード」を策定し、企業に指針を示している。デジタルガバナンス・コードでは「ビジョン・ビジネスモデル」「戦略」「組織づくり・人材・企業文化に関する方策」「成果と重要な成果指標」などの項目に対し、柱となる考え方、認定基準、望ましい方向性、取り組み例をガイドとして示した。
2020年11月からは、デジタルガバナンス・コードの基本的事項に対応する企業を国が認定する「DX認定制度」を開始。デジタル変革の準備が整った企業を対象に「DX-Ready」のお墨付きを与え、DX推進を後押ししている。23年8月1日時点で全国767社が認定されるなど、徐々に認知度が高まりつつある。
認定事業者は「DX認定ロゴマーク」を名刺やウェブサイトに掲載することで、DXに意欲的な企業であることを対外的にアピールできる。そのほか、DX投資促進税制による優遇措置が受けられたり、認定を受ける過程で課題の洗い出しができたりするメリットがある。認定を取得するにあたり、DX推進において自社がどの位置にいるかという現在地が把握できたり、課題の洗い出しができたり、どう対処すべきかという方向性が見えたりといったことが進めていく中でのメリットとして挙げられる。
では具体的に、どのようにすればDX認定を取得できるのだろうか?
NTTデータビジネスシステムズ(以下、NDBS)のサポートを受け、23年6月1日、DX認定事業者の認定を取得した古河電気工業(以下、古河電工)の事例について、取得までの舞台裏、制度がもたらす効果を担当者のレビューを交え、解説する。
製造業のパイオニアがさらなる高みを目指してDX認定に挑戦
古河電工は、2023年に創業139年を迎えた製造業の老舗だ。
電線製造を祖業とし、近年は「メタル」「ポリマー」「フォトニクス」「高周波」の4つの技術力を核として、情報通信ソリューション、エネルギーインフラ、自動車部品・電池、電装エレクトロニクス材料、機能製品など幅広い分野に製品・サービスを提供している。
2020年、同社は研究開発部門に「デジタルイノベーションセンター」を設立。AI(人工知能)、IoTなどのデジタル技術を活用した“ものづくり革新”を目指して活動を続けてきた。2023年4月にはそこにIT部門のメンバーらを加える形で「デジタルトランスフォーメーション&イノベーションセンター(以下、DXIC)」を設立し、全社横断型組織としてDXに取り組み始めた。
DXICセンター長を務める野村剛彦氏は、「DXICに発展したことで経営層とのコミュニケーションも増え、より俯瞰して進められるようになりました」と手応えを見せる。研究開発部門とIT部門が積極的に意見を交換しながらDXを推進する体制は、製造業にとって理想的な姿と言える。そのうえで、DX認定制度を取得した経緯について次のように語る。
「組織を整備してDXを推進してきたものの、我々自身がどれだけデジタルガバナンス・コードに適応しているかが不明でした。そこで自分たちのベンチマークも兼ねてDX認定の取得にチャレンジしようと考え、2022年夏にプロジェクトをスタートさせました」(野村氏)
野村 剛彦 様
古河電気工業株式会社
戦略本部 DX&イノベーションセンター(DXIC)
センター長
DX認定制度はIPAによる「DX認定制度事務局」が窓口を担当。企業は事務局に申請書類を提出して審査を受け、審査結果をもとに経済産業省が認定する流れだ。DXIC主査の高橋浩司氏は「まずはDX推進の自己診断から始めたのですが、客観的な評価がないことから基準をどれだけ満たしているのかが判断できませんでした。さらに、通常業務と並行しながらの対応も限界がありました。その課題を解決するためにNDBSに支援いただきました」と説明する。
NDBSが提供する「DX認定取得支援サービス」は、「Step1:現在の取り組み状況の可視化」「Step2:デジタルガバナンス・コードに沿った活動の推進支援」「Step3:改善項目の抽出と強化」と大まかに3段階で構成される。
高橋 浩司 様
古河電気工業株式会社
戦略本部 DX&イノベーションセンター(DXIC)
主査
支援を担当したNDBSの藤田みさえ氏は「DX推進は、とかく最新テクノロジー導入に偏ってしまう傾向が強いのですが、デジタルガバナンス・コードがカバーする範囲はITに限らずビジョン、戦略、組織、人材など多岐にわたります。それだけに企業が幅広くDX基盤を整備しているかが認定の鍵を握ります。その点で古河電工様は足回りがしっかりしていたので支援もスムーズでした」と話す。「自己診断も実践されていたので、デジタルガバナンス・コードに従ってどこがグッドポイントで、どこが改善ポイントなのかを二人三脚で考えながら取り組んできました。ITを専門としない事業会社がDX認定を取得することには大きな意味があります。DX認定は、デジタル化を推進して社会に貢献している姿勢を示す“バッジ”だからです。これまで支援してきた事業会社の方々からも、『やはり取得した価値はある』と納得していただいています」(藤田氏)
DX認定はきっかけ。
より推進していくために必要なこととは?
順調に進んだように思えるが、障壁がなかったわけではない。デジタルガバナンス・コードでは価値創造のストーリーやデジタル活用戦略、指標に基づく成果などをステークホルダーに向けて発信していくことを基本的事項に掲げている。実はこの点が最も苦労したと野村氏は振り返る。
「それまで、外部に向けて成果を大々的に発信してきませんでした。もちろんビジョンは表明していますが、どのような成果が出たのかを示さないと本当に取り組んでいるかどうかは外からはわかりません。一方、我々はものづくり企業ですから詳細に触れると製品やサービスの機密に関わってくるジレンマがあります。これをクリアするためにNDBSと相談しながら、バランスを取って情報発信をするように努めました」(野村氏)
2023年6月に取得したばかりだが、事業部門の社員も社外にDX認定をアピールできるようになり、より一層DX推進へのモチベーションが高まってきた。その効果を感じながらも、高橋氏は「DX認定はスタート地点、きっかけに過ぎない」と言う。
「デジタルリテラシーは向上しつつありますが、まだ一部であり全社には広がっていません。デジタル技術の導入、活用とセットで人材を育成し、自分たちでDXを推進するようにマインドセットを変えていく必要があります。これらの取り組みを継続することで全社のレベルアップにつながるのです」(高橋氏)
例えば人材育成に関しては、資本業務提携先のアイデミーが提供するAI開発のeラーニングを筆頭に、BIやRPAなどのデータ活用に向けた学習コンテンツを提供。現在は挙手制による任意参加だが、デジタルリテラシーの全社的引き上げに資する「活用を強力に促進する施策」も実施したいと野村氏は話す。
「工場の現場ではAIによる画像認識システムやビッグデータ解析、IoTによる設備プロセスデータ、稼働データの取得など工数削減に結びつくDXがすでに導入されています。しかし社内のデータは工場だけではなく、営業現場、バックオフィスなど、ありとあらゆる場所に存在します。将来的にはERP、エンタープライズIT、エッジデータから各現場でPCや紙で扱われるデータすべてを連携し、全員がこれらデータを活用して進めるDXを自分ごととして捉えていかねばならない。だからこそ、全社の意識改革と具体的な道しるべを示すことが我々の重要な役割だと考えています」(野村氏)
先に述べたようにDX認定制度はDX-Readyレベルであり、その上層にはDX-Excellentレベルとなる「DX銘柄」という最上級のお墨付きがある。古河電工ではDX銘柄の選定も視野に入れており、今後もNDBSとのコラボレーションでDXに取り組んでいく予定だ。社内での浸透を促すため、NDBSではワークショップなども検討しているという。
野村氏は「昨今ではAIを活用した道路附属物維持管理ソリューション『みちてん®シリーズ』を新規事業で立ち上げるなど、当社でもデジタルによる新しい価値創造が実現しています。こうした実績を積み重ねるとともに、デジタルガバナンス・コードに沿って推進していけばDX銘柄の選定にたどり着くはずです」と期待を寄せた。
古河電気工業株式会社
- 事業内容
情報通信ソリューション、エネルギーインフラ、
自動車部品・電池、電装エレクトロニクス材料、
機能製品など幅広い分野に製品・サービスを提供 - 設立年月日
1896年6月25日 - 所在地
東京都千代田区大手町2丁目6番4号(常盤橋タワー) - URL
https://www.furukawa.co.jp/