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古河電気工業株式会社様:DXビジョン浸透支援

共有できる未来を描きDXを自分事に 「コモングラウンド」はDX推進の“羅針盤”

お客様の課題

DX専門組織を立ち上げ、メンバーによる自律的なDX推進を目指していたが、組織の拡大をきっかけに、掲げられたDXビジョンの捉え方や納得感にずれが生じ、チームの一体感不足や方向性の不一致が課題となっていた。

解決ポイント

メンバーがお互いの価値観や目指すべきDXの方向性を共有し、組織の共通認識となる「コモングラウンド」を全員で議論しながら作成。作成後も継続してチーム内で議論を続けたことで組織の一体感が醸成され、DXビジョンを自分事としてとらえ、自律的に行動する組織の土台づくりができた。

DXの専門組織を立ち上げる企業が増えている。しかし、目指すDXのビジョンを明確化し、全メンバーに腹落ちさせなければ、同じ方向を見て進むことはできない。2023年4月、古河電気工業は従来のDX専門組織を強化し、DX推進の加速を図った。だが、メンバー全員にDXビジョンを浸透させることに課題を感じていた。そこで、メンバーが共有できる未来として「コモングラウンド」を描くことで、全メンバーへDXビジョン浸透を図り、組織の一体感を醸成することに成功した。その概要と成果について報告する。

DXのビジョンを自分事として理解
行動できる自律型の組織を目指す

 2020年、古河電気工業(古河電工)はDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する部署として、研究開発部門とものづくり改革本部出身のメンバーにより「デジタルイノベーションセンター(DIC)」を立ち上げた。2023年4月、このDICと情報システム部門を統合して、「DX&イノベーションセンター(DXIC)」へ改組した。20人ほどだった組織が、約50人の体制になった。

 「組織が急拡大したため、メンバーがお互いの業務や価値観を十分に知らない状態でした。このままでは実務としてDXを推進できたとしても、組織として大切な何かが抜けたままになってしまうことで、実効性の高いDXを実現できない可能性を危惧し、チームの一体感を醸成するとともに、メンバーが自律的に動ける組織にしたいと考えました」と、古河電工 戦略本部DXIC長の野村 剛彦氏は振り返る。旧DICのメンバーは、これまでもAIやIoTなどを活用し、主に生産現場のDXに取り組んできた。一方、情報システム部門出身のメンバーは、基幹業務システムを管掌している。「お互いの業務内容や考え方を知ることで、初めて実効性の高いDXが実現できる」と野村氏は述べる。

古河電気工業株式会社野村様
野村 剛彦 様
古河電気工業株式会社
戦略本部 DX&イノベーションセンター(DXIC)
センター長
 古河電工 戦略本部DXIC主査の高橋 浩司氏は、「IoTで生産プロセスを可視化すれば、ボトルネックの解消などは実現できます。しかし、更なる生産性向上を図るには、素材原価と利益の関係をシミュレーションしたり、営業の動きと生産計画を連動させたりするなど、より大きな視野でDXに取り組む必要があります。その入り口として、生産系システムと業務系システムの連携は不可欠です。それはDXICの重要課題の1つであり、そのための重要なポイントとして、メンバーが1つの方向に向かって柔軟に連携できるようにする必要があります」と語る。

古河電気工業株式会社高橋様
高橋 浩司 様
古河電気工業株式会社
戦略本部 DX&イノベーションセンター(DXIC)
主査
 チームとしての一体感を高め、方向性を共有するには何が必要か。野村氏らはNTTデータビジネスシステムズ(NDBS)に相談した。2023年6月のDX認定取得にあたってサポートを受けた経緯があり、これまでの同社の取り組みやDXICの状況をよく知っていたからだ。相談を受けたNDBS 第一システム事業本部 コンサルティング部 シニアコンサルタントの下間 大輔氏は、「自律型の組織を目指すには、経営陣が打ち出したビジョンを管理職層、現場層のそれぞれが自分事として腹落ちさせ、どう取り組むかを考えることが必要になります。上から言われたからやるではなく、自分たちで考え、実行していけるようになることが求められています」と話す。

お互いを知ることで共通の価値観を見出し
「コモングランド」を形成

 取り組みのスタートとして、まずDXICの部課長クラス約20人が集まり、丸1日かけて集中的なワークショップを行った。そこで、同社が目指すべきDXの方向性を忌憚なく話し合い、組織の共通認識となる「コモングラウンド」を形成する。コモングラウンドとは、DXのビジョンをより具現化したイメージのことだ。

 これを実現するため、ワークショップではまず、これまでの歩みを明らかにした。それぞれの組織における過去の活動や、大切にしてきた価値観を振り返り、それをメンバー間で共有することで、お互いの組織のことをよく知る。同時に「うちの会社はこんな会社だったんだ」「こんなことに取り組んでいたんだ」といった気づきを得ることが狙いだ。

 次に、個人の行動や価値観を確かめた。メンバーそれぞれが個人ワークを行い、自分の過去から現在に至る活動とその価値観を振り返った。自身が大事にしてきた行動や価値観を再認識したうえで、それを他のメンバーと共有。狙いは、自分のやりたかったことや課題を抽出することだ。参加メンバーに共通する価値観と文脈(コンテクスト)を整理していく。

 そのうえで、「バリューネットワークマッピング」で実現したい世界観を表現する。バリューネットワークマッピングとは、抽出された共通的な価値観や文脈をベースに、個人として、また会社として実現したいことを組み立てブロックや工作キットなどを使ってビジュアルに表現するワークだ。
ヒストリー模様 過去の活動を振り返り、価値観を共有したうえで実現したいことを議論。多数の考えを皆で共有し、その中から共通の文脈(コンテクスト)を見出していく
 続いて、別の日にDXICの一般社員のスタッフメンバー全員が集まり、2時間ほどのワークショップを行った。管理職層が実施したワークショップの内容とコモングラウンドを共有したうえで、全メンバーが4人ずつのグループに分かれて自由に対話する。リラックスした雰囲気の中、メンバーをローテーションする「ワールドカフェ方式」で話し合った。この対話でコモングランドを自分事として理解し、自分たちの考えるコモングランドになるようにブラッシュアップしていくイメージだ。
ワールドカフェ方式  ワールドカフェ方式で、メンバーを変えながら対話。短い時間に多くの人と話し、新たな気づきやアイデアを得る
 「今回は結論を出すことを目的とせず、お互いの考えを自由に話し合い、共有しました。対話の中で気づきを得て、自身の考えを見つめ直す機会にしてもらうためです」(高橋氏)。メンバーからは、「全体で対話する機会は貴重」「初めて顔を合わせたメンバーと交流できた」「組織が目指すDXと自分の業務のつながりをしっかり考えていきたい」といった感想が聞かれた。

企業がDX推進を自走するために
体験に基づく実効性の高い支援を提供

 「DXの方向性とイメージを、全員で共有できました」(野村氏)。今回のワークショップの内容については、事前にNDBSと何度も打ち合わせた。標準的なワークの内容を、同社の実態や要望に合う形にチューニングしていった。「私たちのやりたい方向性を理解し、具体的な方法論やプログラム、スケジュール作りなどを支援してもらい、NDBSは多くの引き出しを持っていると感じました」と野村氏は話す。

 高橋氏は「トップダウンでビジョンを打ち出すことも重要ですが、ボトムアップも重要だと感じています」と述べる。DXICのメンバーと、ものづくりの現場との密な連携が、改革を継続するには必須だ。また1つの部門で成功したDX施策を他の部門と共有し、すばやく横展開させていく必要がある。その際、現場層がトップの打ち出したビジョンの方向性を理解し、自分事としてとらえ自律的に行動することが重要だ。

「トップダウンで進めようとしても、日本企業の現場は『経営陣はそう言うが、実業務との関連があるのだろうか』『本当に自分たちで変革ができるのか』という思考になりがちです。現場のメンバーが腹落ちしないと、はじめは前に進むことはできても途中で方向を見失ったり、繁忙を理由に他人任せになったりするケースを見てきています。だからこそ現場のメンバーにも変革の必要性や自分自身で変革を実現するんだというマインドを持ってもらうことが大切です。また、現場メンバーの取り組みを継続していくために、当社ではお客様自身が自走できる環境づくりの支援にも力を入れています」(下間氏)。NDBSでは、DXの最新動向をとらえつつ、日本企業の特徴を理解したうえで顧客企業に寄り添っている。また、NTTデータグループ各社がDXの支援で体験した失敗や成功の事例を集約し、コンサルティングに生かしている。

下間氏
下間 大輔
株式会社NTTデータビジネスシステムズ
第一システム事業本部
コンサルティング部
シニアコンサルタント
 今回のプロジェクトは、NDBSが中心となり、NTTデータ経営研究所の専門家を加えた布陣で臨んだ。NTTデータグループの中には、様々なノウハウを持つ専門家がいる。必要に応じてグループ内からベストなメンバーを集められる点も、同社の強みだ。

 「今回の取り組みで、組織強化の土台を作ることができました。しかし、これからが大切です。半年に1度、私たち自身の手で今回実施したワークショップの手法を活用しながら、常に組織が同じ方向を向いて進めるようにしていきます」(野村氏)。また、高橋氏は「小さくても確実な成果を早く積み上げ、DXの効果を可視化していきたいです」と述べる。

 古河電工は今後、「工場系システムの刷新」「ITリスク管理強化」「データ蓄積・データ活用の当たり前化」「DX推進組織の強化」を4大柱にDXを進めていく。DXICはそれをリードしながら、デジタル人材の育成にも力を入れていく考えだ。

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古河電工様
古河電気工業株式会社

  • 事業内容
    情報通信ソリューション、エネルギーインフラ、
    自動車部品・電池、電装エレクトロニクス材料、
    機能製品など幅広い分野に製品・サービスを提供
  • 設立年月日
    1896年6月25日
  • 所在地
    東京都千代田区大手町2丁目6番4号(常盤橋タワー)
  • URL
    https://www.furukawa.co.jp/

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